機関誌「非破壊検査」 バックナンバー 2007年度

連載 非破壊検査の歴史

我が国における超音波探傷の歴史 [ X ]

  松山  宏 名誉会員(前湘菱電子(株)・元三菱電機(株))

 

The Histoy of Ultrasonic Testing in Japan [ X ]

Hiroshi MATSUYAMA Honorary Member

(Formerly Shoryo Electronics Co./Mitsubishi Electric Co.)

キーワード 非破壊検査, 超音波探傷検査,パルス法,反射法,超音波探傷装置,超音波厚さ計



7. 我が国における超音波探傷技術の更なる進歩
(1992〜2000年) 続き
 1994年,さる大手建設会社から,簡易探傷器の開発が持ち込まれ,湘菱電子(現,菱電湘南エレクトロニクス)は,簡易超音波探傷器SUT-1を自主開 発した。この頃に建築用鋼材として使用される電炉平鋼に開裂(厚板の厚さ方向の中央部分に生じる微細な亀裂)が入る事故をきっかけに企業内の材料検査用と して,鋼板を切断する前に溶接個所周辺を探傷し,この開裂を検出し効率のよい材料取りと溶接部の品質確保を目的とした。
 しかし,この探傷器の開発が完了した頃には,電炉平鋼の品質が改善され開裂の存在するような製品がなくなった。
 その結果,この探傷器は1台も販売できなかった。
 この探傷器は,当時,市場で容易に入手できる汎用のLSI(Large Scale IC:大規模集積回路)を多用することで小型化され,二振動子探触子の上にマウントされた構造となった。しかも単三アルカリ乾電池1本で8時間以上動作す るものであった。なお質量は電池及び対比試験片を含み220gfで,きずを検出した場合はLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)で表示する方式であった
 また,『パルス圧縮超音波探傷器』と題して,報告されていたパルス圧縮超音波探傷に使用する探傷器の詳細が紹介された。この探傷器の型名はUI-1000であり,その外観を図2に示す。

この年,分科会規則の改定によって,年4回の分科会の内1回を公開のシンポジウムとすることになった。このシンポジウムは「超音波による非破壊評価シンポジウム」と称され,(以下,超音波シンポジウムと略す。)次のような検討・研究の成果が発表された。            
(1)『デジタル超音波探傷器「UI-21」の応用』と題して,この探傷器が搭載したFFT(Fast Fourier Trans-formation:高速フーリエ変換) 機能の使用例が紹介された。
(2)『多重変調送信信号を用いたパルス圧縮法による超音波探傷法』と題して,位相変調送信波を用いたパルス圧縮法
の詳細が報告された。
(3)『チャープ信号を用いたパルス圧縮超音波探傷法』と
題してチャープ波を用いたパルス圧縮超音波探傷法の研究成果が報告された。
 既に符号で位相変調された送信波を用いた零レンジサイドローブのパルス圧縮超音波探傷法が報告されていたが,ここで報告された方法は符号で周波数変調された送信波を用いており,位相変調のパルス圧縮法と同様の効果が得られている。

 

 

 

     
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