機関誌「非破壊検査」バックナンバー 2019年1月度

巻頭言①

「新年のご挨拶」緒方 隆昌

 2019 年の年頭にあたり,謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 技術立国としての我が国産業の継続的発展には,時々刻々とグローバル規模で変化する市場を獲得する一方で,新しい製品・サービスの市場を創造し続けることが極めて重要です。しかし,主要産業の成長サイクルにおいて成長から成熟を達成した我が国産業界は,次代の新成長サイクルにチャレンジする意欲よりも,成熟期をいかに長らえるかに注力しているかに見えます。競争の激しい先端産業・成長産業をリードするには,従来の枠にとらわれない価値や技術の創造が求められます。我が国が,さらなる発展を遂げるには,先ず,将来市場に合わせて事業や技術を柔軟に変革できる文化を構築すべきで,これらは,産業界のみならず,それを支える学術・教育界においても同様だと考えています。
 会長就任後,当協会の今後のさらなる発展に向けたビジョンを策定し,具体的な5 つのアクションに着手しています。これらの推進においては,新しい価値や技術を創造して当協会のステークホルダーである社会,会員,産業界,学術・教育界及び行政機関に有益な価値をもたらすことを目指しています。各アクションについての取り組みを次に紹介します。
 「業界バリューチェーンの構築」は,需要と供給が連鎖した業界間のネットワークを強化するのが狙いです。そのために,例えば,電力業界,航空業界,鉄道業界などエネルギー産業や運輸産業などとの連携に努めています。これら川下産業との連携が進めば,次は検査業界を含めたバリューチェーンを強化するステージに移行する予定です。
 「学術・産業分野の拡大と融合」については,他の技術分野や産業分野と広く連携する場を設定することで,学術・産業分野の拡大と融合に努めています。例えば,航空宇宙分野について,日本航空宇宙非破壊試験委員会(NANDTB-Japan)の事務局及び航空産業非破壊検査トレーニングセンターの運営協力を行っています。また,経済産業省との連携で「NDIS 2430:2017 半導体製造用高圧ガス容器の超音波探傷検査による再検査方法」を,石油エネルギー技術センターとの連携で,将来の水素社会を見据えた「NDIS 2431:2018 圧縮水素スタンド用鋼製蓄圧器の超音波探傷試験方法」を制定しました。さらに,機械学会及び土木学会との連携や,ヘルスモニタリング及びコンディションモニタリング分野との連携などを計画しています。
 「学会機能と工業会機能のシナジー強化」は,学会機能としてのシーズと業界団体機能としてのニーズの両面を有する当協会の特徴を生かすことが狙いです。具体的には,各業界の現状及び今後の課題について大局的な視点から調査し,非破壊試験技術に関わる関連産業の動向把握及び学術・教育界へのニーズ提供となる「産業界課題マップ」を作成しています。一方,上記課題に対応した「学術・教育界のシーズマップ」も作成することで,学会機能と工業会機能のシナジーを強化する予定です。
 「有効なグローバル展開の強化」については,APFNDT(アジア・太平洋非破壊試験連盟),ICNDT(世界非破壊試験委員会),ISO/TC 135(ISO 非破壊試験技術委員会)等への積極的な対応を行うとともに,各国協会との相互交流を促進してグローバルネットワークの強化を図っています。非破壊試験技術者のグローバル化対応については,米国非破壊試験協会(ASNT)のACCP 資格とJIS Z 2305 資格の二国間相互承認を2019 年度に開始できるように進めています。11 月の秋季講演大会では,韓国非破壊試験協会(KSNT)とインターナショナルセッションを共同で開催した他,英国非破壊試験協会(BINDT)と1996 年以来となるProfessionalAgreement を締結して,お互いの技術協

 

巻頭言②

「高圧ガス保安における非破壊検査」特集号刊行にあたって
井上 裕嗣

 高圧ガスを取り扱う設備や機器に関わる安全を確保することは社会的に重要な技術課題の一つであって,世界各国のそれぞれで法規制が行われており,日本でも1922 年に「圧縮瓦斯及液化瓦斯取締法」が公布されて以来,現在の「高圧ガス保安法」に至るまで連綿と受け継がれています。高圧ガス保安に関して非破壊検査はその重要な一翼を担っており,高圧ガス保安法をはじめとする政令,省令,告示,通達,そして技術基準等の一連の規則類にも「非破壊検査」という用語がしばしば見受けられます。
 当協会では,2017 年度に高圧ガス保安に関連した2 件のNDIS を新たに制定しました。うち1 件は経済産業省の高圧ガス保安室からの委託を受けて制定した「NDIS 2430 半導体製造用高圧ガス保安容器の超音波探傷検査による再検査方法」であり,もう1 件は(一財)石油エネルギー技術センター(JPEC)からの依頼を受けて制定した「NDIS 2431 圧縮水素スタンド用鋼製蓄圧器の超音波探傷試験方法」です。これらはいずれも外部機関からの直接的な依頼を受けて制定したもので,その活動は2016 年度に策定された当協会のミッションステートメント「社会に価値ある安全・安心を提供するJSNDI」の趣旨にも合致するものです。
 今回は,これら2 件のNDIS の制定をきっかけとして,高圧ガス保安とそれに関連する非破壊検査についての特集を企画しました。
 まず初めに,高圧ガス保安協会の鈴木則夫氏に,日本における高圧ガス保安の概要をできるだけ平易に解説していただきました。高圧ガス保安法をはじめとする一連の複雑な規則等について,理解を深めていただけるものと思います。続いて,NDIS 2430 に関する2 件の解説を配置しました。1 件は制定に至る背景,制定の経過とその後の動向を解説したもので,東芝メモリ(株)の浜田敏郎氏と原案作成委員長の私自身が執筆いたしました。また,もう1 件は特に超音波探傷試験による検査方法について詳しく解説したもので,特に技術的内容の検討について献身的にご尽力いただいた元 日鋼検査サービス(株)の田中秀秋氏にご執筆いただきました。一方,NDIS 2431 についても,同様の構成で2 件の解説を配置しました。制定の背景等については,水素ステーションや蓄圧器に関する平易な説明も含めて,JPEC の吉田 剛氏と今岸健郎氏及び原案作成委員長である東北大学の三原 毅氏にご執筆いただきました。また,規格の中核である超音波探傷試験による検査方法については,2012 年度からJEPC水素スタンド保安検査基準委員会の保安検査基準分科会で主査と委員を務め,NDIS の元となる資料の作成に尽力された元 日鋼検査サービス(株)の田中秀秋氏及び(株)アミックの和高修三氏にご執筆いただきました。
 これら2件のNDIS は,いずれも関係各位の長期間にわたる地道な検討の成果があってこそ制定に至ったものであって,当協会のみの成果ではありません。ただし,こと非破壊検査に関しては当協会が責任をもって規格化することも重要であって,このような形で当協会が社会に貢献できたことは喜ばしいことと思います。今後も高圧ガス保安に限らず様々な分野において当協会が社会に貢献できるよう,今回の特集が役立つことを期待します。最後になりましたが,ご多忙にもかかわらず快くご執筆くださった方々に厚く御礼申し上げます。

 

解説

高圧ガス保安における非破壊検査

高圧ガス保安法における非破壊検査
高圧ガス保安協会 鈴木 則夫

Non-destructive Inspection in High Pressure Gas Safety Law
The High Pressure Gas Safety Institute of Japan (KHK) Norio SUZUKI

キーワード:非破壊検査,高圧ガス,高圧ガス保安法,圧力容器,保安検査,容器再検査

1. 高圧ガスに関する法規制
 「高圧ガス」とは文字のとおり「圧力の高いガス」であるが,設計製作不良や管理不良により機器や容器が破裂し,またはガスの漏えいにより爆発や中毒を起こす危険性がある。我が国では明治から大正時代にかけて高圧ガス関連産業が出現したが,これに伴って事故も発生するようになった。
 1967(昭和42)年発行の通商産業省(現 経済産業省)編集の「高圧ガス取締法逐条解説」によると,1917(大正6)年から1922(大正11)年までの6 年間で17 件(死者23 名,傷者36 名)もの人身事故が発生したことが,大正11 年公布の「圧縮瓦斯及液化瓦斯取締法」(以下「圧縮法」という)制定のきっかけになったといわれている。
 その後,圧縮法は1951(昭和26)年に「高圧ガス取締法」に全面改正され,1997(平成9)年には法律名が「高圧ガス保安法」(以下「高圧法」という)に変わり,現在に至っている。

 

NDIS 2430 制定の背景,経過及び関連動向について
東京工業大学 井上 裕嗣  東芝メモリ(株) 浜田 敏郎

Establishment of NDIS 2430: Background, Progress and Resulting Activities
Tokyo Institute of Technology Hirotsugu INOUE
Toshiba Memory Corporation Toshiro HAMADA

キーワード:高圧ガス容器,再検査,耐圧試験,超音波探傷試験,アコースティック・エミッション試験,半導体

はじめに
 (一社)日本非破壊検査協会(JSNDI)では,2017 年11 月28 日にNDIS 2430:2017「半導体製造用高圧ガス容器の超音波探傷検査による再検査方法」1)を制定した。この規格の主目的は,半導体製造用の超高純度高圧ガスの充填・運搬・消費に使用される容器の再検査において,従来の方法に代えて超音波探傷試験(UT)による非破壊検査を適用することにある。本稿では,NDIS 2430 の制定に至る背景,制定の際の経過,及び制定後の関連動向について述べる。

 

NDIS 2430 の技術的内容
−半導体製造用高圧ガス容器の超音波探傷検査による再検査方法−
元 日鋼検査サービス(株) 田中 秀秋

Technical Contents of the Reinspection Method based on Ultrasonic Inspection
of High Pressure Gas Containers used for Manufacturing of Semiconductors

Former Nikko Inspection Service Co., Ltd. Hideaki TANAKA

キーワード:高圧ガス容器,半導体製造,自動超音波探傷検査,水浸法

はじめに
 本規格は半導体産業の競争力を強化するため,半導体事業者が行った耐圧試験に代え非破壊試験を採用する実験・調査の実証試験結果を基に規格化の委託を経済産業省商務流通保安グループ高圧ガス保安室から受け,委員会を立ち上げて検討し,制定したものである。
 高圧ガス容器は溶接なしの絞り加工によって製造され,図1 に示すように一般的には50 L 程度の中小型ガス容器と1000 L 程度の大型ガス容器に分けられる。しかし,半導体製造用高圧ガス容器においては容量の区別を行わず,超音波探傷検査が可能な大きさとして,2 L 以上を対象としている。
 高圧ガス容器の超音波探傷は自動探傷で行うのが効率的であるが,規格としては自動探傷を必須とはせず,手動によるマニュアル探傷も規格に含めた。これは,自動探傷への過渡期としての手動探傷の適用及び自動探傷結果で疑義が生じた場合の確認探傷のためである。
 高圧ガス容器の検査を耐圧試験から超音波探傷検査に代替するためには,安全性,信頼性,メリットの説明が重要である。

 

NDIS 2431 制定の背景
( 一財)石油エネルギー技術センター 吉田  剛  今岸 健郎
東北大学大学院工学研究科 三原  毅

Background of Establishment of NDIS 2431
Auto Oil and New Fuels Dept. Japan Petroleum Energy Center Takeshi YOSHIDA and Takeo IMAGISHI
Department of Materials Processing, Tohoku University Tsuyoshi MIHARA

キーワード:蓄圧器,超音波,水素ステーション,保安検査

はじめに
 現在,経済産業省では,水素社会の実現に向けてその取り組みを加速している。水素を燃料とする燃料電池自動車(以下,FCV という)については2020 年度までに4 万台程度,2025年度までに20万台程度,2030 年度までに80 万台程度の普及を目指し,水素・燃料電池戦略ロードマップを改訂1)し,さらに,「第2 回再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議」において,水素基本戦略2)が策定された。国内では,FCV へ水素燃料を供給する水素ステーションは,現在約100ヵ所が稼働しており,2020 年度までに160ヵ所程度,2025 年度までに320 ヵ所程度とすることを計画している。
 通常,水素ステーションでは82MPa の蓄圧器から差圧を利用して,FCV の水素容器へ70 MPa の水素を供給している。水素ステーションは,高圧ガス保安法の適用を受けるため,1 年に1 回,高圧ガス設備の保安検査を受ける必要がある。蓄圧器についても保安検査を受けて,設備の健全性を確認している。
 40MPa を超える蓄圧器の保安検査についてはその方法が明確に定められておらず,都道府県等と協議し,個別の検査方法(内部目視検査,磁粉探傷検査または超音波肉厚測定等)で保安検査を実施している場合が多い。
 (一財)石油エネルギー技術センター(以下,JPEC という)では,2013 年より(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下,NEDO という)の委託を受けて,「70 MPa 水素スタンドの保安検査基準の整備」に関する事業を実施した。この事業の中で,加圧状態の蓄圧器の外部から超音波探傷試験により蓄圧器内面を検査する方法が,蓄圧器の耐圧性能及び強度を確認するための極めて有効な手段となり得ることを確認した。この検査方法が規格化され,保安検査の方法として確立され,どの非破壊検査事業者でも容易に蓄圧器内面の健全性を確認することが可能となれば,水素ステーションの保安の確保に貢献し,保安検査期間の短縮及び費用の削減も可能となると考えている。結果として,水素社会実現への貢献も期待できることから,鋼製蓄圧器外面からの内面超音波探傷試験方法に関する規格の作成を(一社)日本非破壊検査協会(以下,JSNDI という)に依頼した。

 

NDIS 2431 の技術的内容
−圧縮水素スタンド用鋼製蓄圧器の超音波探傷試験方法−
元 日鋼検査サービス(株) 田中 秀秋  (株)アミック 和高 修三

Technical Contents of NDIS 2431: Method for Ultrasonic Testing
of Storage Steel Tanks in Hydrogen Filling System

Former Nikko Inspection Service Co., Ltd. Hideaki TANAKA
AMIC Co., Ltd. Shusou WADAKA

キーワード:水素,蓄圧器,低合金鋼,圧力容器,水素ステーション,フェーズドアレイ法,TOFD 法

はじめに
 燃料電池自動車に水素を供用する水素ステーションでは,水素蓄圧器用材料としてSCM435 鋼(クロムモリブデン鋼)等が適用されている。このような高強度鋼は水素ガス脆化感受性を示すことが知られており,水素蓄圧器として用いるときにはき裂進展性の確認が必要である。
 水素蓄圧器では常用圧力40 MPa 及び/または82 MPa で運用されており,このような超高圧水素ガス環境下での材料特性を踏まえた機器の安全性,信頼性,耐久性の評価技術及び設計・製作技術の確立が重要である。現在用いられている鋼製蓄圧器の代表的な形状を図1,図2 に示す。
 水素環境におけるき裂進展速度に関わる因子には,最高圧力,圧力変動範囲及び圧力の変動周期があり,材料としては鋼材の材質,熱処理を含む組織の影響,材力値がある。さらに,水素と接する面の応力値がある。き裂進展速度のデータを得るにはこのように多数の因子が影響していることから,対象とする材質,水素圧力を限定して,水素環境中疲労試験等のデータの収集が行われている。
 水素蓄圧器を長期間にわたって安全に運用していくためには,き裂進展速度が小さいこと及び初期き裂が小さいことが必要とされる。この場合の初期き裂は非破壊検査により検出できる必要がある。このため,内部のきずを検出する超音波探傷検査では,できるだけ小さなきずを検出できる探傷方法及び探傷装置の選定が必要となる。また,効率の良い探傷方法,狭隘部及び鏡部においても抜けのない探傷が可能な方法の検討が必要となる。

 

資料

第6回日米非破壊試験シンポジウムの報告
シンポジウム組織委員長,東京工業大学 廣瀬 壮一

Report on the 6th Japan-US NDT Symposium
Chairman of Symposium Organizing Committee, Tokyo Institute of Technology Sohichi HIROSE

キーワード:非破壊試験,JSNDI,ASNT,合同シンポジウム,国際会議

はじめに
 第6 回日米非破壊試験シンポジウムを,2018 年7 月8 日(日)から7 月12 日(木)までの間,米国ハワイ州オアフ島にあるハワイコンベンションセンターにおいて開催した。第1 回の同シンポジウムは1996 年6 月にオアフ島タートルベイのホテルにおいて開催された。その後,第2 回は第1 回と同じ場所で行われ,第3 回から第5 回まではマウイ島におけるホテルで行われた。今回は最初の2 回と同じ開催地であるオアフ島に戻ったわけだが,ハワイ最大の都市のホノルル市で開催したのは初めてであった。
 なお,第1 回の同シンポジウムが米国非破壊検査協会(ASNT)の主催で実施され,それ以降,ASNT と日本非破壊検査協会(JSNDI)が交互に主催を務めてきたことから,今回のシンポジウムはJSNDI の主催で開催した。シンポジウムのテーマは,前回と同様,“Emerging NDE Capabilities for a Safer World( 安全社会のための NDEの適応性)”とした。

 

     
1か月半年年間

<<2022年02月>>

    • 1
    • 2
    • 3
    • 4
    • 5
    • 6
    • 7
    • 8
    • 9
    • 10
    • 11
    • 12
    • 13
    • 14
    • 15
    • 16
    • 17
    • 18
    • 19
    • 20
    • 21
    • 22
    • 23
    • 24
    • 25
    • 26
    • 27
    • 28
1か月半年年間

<<2022年01月~2022年06月>>

1か月半年年間